マルメ西港地区(Västra Hamnen)

1970年以前は造船メーカー、コックムス(Kockums)をはじめとし、スウェーデンを代表する重工業地帯の中心地であり、工業都市として知られていたデンマークとの国境に近い港町マルメ(Malmö)。現在は、IT産業や文化政策に力を入れ、デンマーク直通の鉄道の新線が開通したこともあり、最近では非常に開けた町並みへと変化している。そんななかでも、特に際立って将来性を感じさせる地域が、西港(Västra Hamnen)地区である。マルメ中央駅と海岸線の間に位置するこの地域は、マルメ大学の新校舎や、新コンサートホール、マルメ・ライブなど建設ラッシュであるが、2015年現在ほぼ完成している水辺沿いの住宅地域は自然と人口建造物が共存する、居心地の良い市民の憩いの地域となっている。

西港地区は特に、短い夏の数ヶ月の間、長い日照時間と、夏季は水辺で過ごす文化とマッチして市民には非常に人気のある地域である。この地域を構成する、隣国デンマークの玩具、LEGOを連想させる、キュービズム調の家並みは、採光スペースを多くとり、光に飢える北欧市民たちの期待に応える。そして住宅地域を取り囲む海岸線のスカニア公園(Scaniaparken)は、コンクリートと芝生をうまく融合させ、ピクニックをするのにも、野外ジムやダンスのクラスを開くのにもぴったりな空間になっている。また公園内には、海面から近い位置に桟橋が設置され、遊泳地域としても整備されており、地元民の夏の活動パターンを意識した作りとなっている。

vastra_hamnen_malmo1そして、この地域のシンボルともいえるのが、北欧一の高さを誇るタワーでもあるターニン・トルソ(Turning Torso)である。アテネオリンピックのスタジアムを手がけたことでも知られる、スペイン人の建築家、サンティアゴ・カラトラーヴァ(Santiago Calatrava)がデザインを担当し2005年に完成したこのタワーは、高さ190m、54階建てであり、その名の通り、地上階から最上階にたどり着くまで90度ねじれている。現在はオフィスや高級住宅として使用されており、コペンハーゲンから、スウェーデン内へと海上を結ぶエーレスン橋(Öresundsbron)からもはっきりと見える、スウェーデンへの入国者たちを迎え入れるマルメのシンボルとなっている。

またマルメ西港地区のような都市計画は、工場生産が海外に映る流れの中で、スウェーデン国内の産業構造が変わったことで、国内の各都市で観られる現象である。首都ストックホルムの ハンマビー・フェスタッド(Hammarby Sjöstad)地区もそのよい一例である。しかし、こういったニュータウン計画に共通する点は、太陽・水・緑と人が共存する空間を町中に作り出しているということである。これは、都市を少し離れれば森や湖が国土の大半を占めるというスウェーデンの自然天気特色と、自然を愛するスウェーデン国民の願いの表れではないだろうか。

(Text & Photos: Yoshihiro Takahashi)

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