ティンバクトゥ(Timbuktu)

スウェーデンでもヒップホップというジャンルは、ここ数年、ストックホルムなどの都市部を中心に大きな展開を見せている。北欧の文化圏を超えて国際的に知られたアーティストこそいないものの、特に社会的格差や、移民排斥問題などの社会的な主題を当事者の視点から扱った作品が多く、国内では強い影響力を持つジャンルである。そんななか今ではベテランであり、アルバムをリリースするたびに非常にコアなファンを集めているのが、南スウェーデンの大学都市ルンド(Lund)出身のアーティスト、ティンバクトゥ(Timbuktu)である。

1990年代後半からヒップホップグループ、エクセル(Excel)のラッパーとして活躍し、その後2000年にEP「The Conspiracy」でデビュー。その後、以前スウィードナビでも紹介したループトループ(Looptroop)のメンバー、プロモー(Promoe)やヘルト・オフ(Helt Off)などスウェーデンでもよく知られたアーティスト達とコラボをする。そして代表作の一つである、ソロとして3枚目となるアルバム「The botten is nådd!」をリリースする。このアルバムは、タイトル曲の、人生やること全てうまくいかないような状況をレゲエ調のサウンドで綴った「The botten is nådd!(どん底まで落ちた!)」がヒットし、ティンバクトゥはメインストリームでもよく知られる存在となった。その後、ラップだけではなくボーカルも担当した「Resten av ditt liv(残りの人生)」、「Flickan och kråkan(少女とカラス)」など、国内中のラジオで流された国民的ヒット曲を生み出すこととなる。

また近年では、隣国ノルウェーのシンガー/ソングライター、スサンネ・スンフェ(Susanne Sundfør)や、同じくノルウェーでは非常に知られたヒップホップデュオ、マッドコン(Madcon)と共演を果たし、北欧のヒップホップ系のアーティストとしては非常に珍しいことであるが、国境を越えて活動の場を広げている。また国内でも、毎年恒例のチャリティー音楽イベント、ムシークイェルペン(Musikhjälpen)の司会を務めたり、国内の人権擁護を目的としたNGO団体、スウェーデン国連連合(Svenska FN-förbundet)の大使としての活動も含めて、マルチに社会的な活動も行っている。

そんな活動の幅を象徴するかのように、スウェーデン最大の音楽賞、グラミス賞では最優秀ヒップホップアーティスト、最優秀作詞者部門を現在までに7回受賞の快挙を誇っている。また2010年には、平和や非暴力、人種間平等などの活動に勤めたスウェーデン国内の著名な人物に贈られるマーティン・ルーサー・キング賞(Martin Luther King-priset)、2013年には人権擁護や、反人種差別の分野で80年代後半から活動をしているNGO団体12時5分前ムーブメント(5i12-rörelse)から功労賞を受賞するなど社会的な活動も評価されている。最新作「Svarta duvor & vissna liljor(黒い鳩と枯れた百合)」では、移民排斥を掲げるスウェーデン国民党党首を挑発するような歌詞が議論を呼ぶなど、政治的にも強い印象を残す存在となったティンバクトゥ、これからの活動を見守りたい。

(Text: Yoshihiro Takahashi)

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