ストックホルム・ウォーターフロント(Stockholm Waterfront)

近年のストックホルムの建築シーンは、かつてないほど斬新かつ興味深いものになっている。ストックホルムの為政者たちは、少なくともこの30年の間、この街の建築計画にきわめて慎重で保守的な姿勢を貫いてきた。というのも、新たに建設をする場合、その建物が既存の景観を乱すことなく、従来のスタイルに忠実でなければならないという考え方が根強いからだ。結果、現代的で最先端と呼ばれる建物の建築計画はことごとく却下されてきた。しかし、新しい時代を担う若きストックホルマーたちはこの旧態依然とした慣習から脱却し始め、徐々にではあるが確実に次世代の建築構想を膨らませていった。

彼ら、新しい世代が生み出した建築の一つとしてあげられるのが、2011年1月に完成したストックホルム・ウォーターフロントだ。このビルはホテルやオフィス、会議場を併設した多目的施設だ。北欧最大の建築会社ホワイトによる設計で、波打つヴェール状の外郭に覆われた壁面がきわめて特徴的だ。この外郭部分は、実際は3500本もの鉄製のポールで構成されていて、夜になると照明でライトアップされ、建物の外観をより一層特徴的なものにしている。

ストックホルム・ウォーターフロントは、建築的に優れた名作でも昨今のストックホルムで一番おもしろい建築とも言えないが、この街の建築シーンに新しい風を送り込んだことは紛れもない事実だ。ストックホルムで最も有名な建造物であるストックホルム市庁舎が目と鼻の先という、歴史的にきわめて敏感で保守的な場所に建てられたという事実も、それを裏付けている。

前述の通り、ストックホルムにおいて新しい建物はすべて、街の景観を損ねることがないように既存の建物に合わせて建設されるべしとされてきた。そんな街で、これほど大規模で、大胆かつ前衛的なデザインがこの街の象徴的に重大なエリアに建てられたことが新鮮であり、大きな意味を持つのだ。ストックホルム・ウォーターフロントは市庁舎の美的景観に果敢にも挑み、目立った反対もなしに周辺の人々の理解を得て、形状やデザインの観点からも周辺地域に新しい風を送り込んだ。10年前であれつい最近であれ、このようなプロジェクトが遂行、実現される可能性は、実際のところ高くはなかったのだ。このプロジェクトは今後、従来に捉われないストックホルムのモダン建築の先駆者として位置づけられるだろう。
(Text: Martin Ekelin)

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