スコーグスシュルコゴーデン (Skogskyrkogården)

ストックホルムの代表的な観光地といえば、必ずと言ってもいいほどスコーグスシュルコゴーデンはリストの上位にランクインする。スコーグスシュルコゴーデンはスウェーデンに存在する14もの世界遺産の一つで(1994年にユネスコより認定)、近代建築の傑作として世界中で知られている。

スコーグスシュルコゴーデンは、建築家のグンナール・アスプルンド(Gunnar Asplund)とスィーグッド・レーヴェレンツ(Sigurd Lewerentz)により1915年から1940年にかけて建造された広大な森と墓地の複合施設で、「森の礼拝堂」の建設からこの壮大な計画はスタートした。“スコーグスシュルコゴーデン”を直訳すると「森の墓地」という意味で、この墓地では自然の使い方が革命的であり、それ以降に世界中で墓地のデザインに影響を及ぼしたと言われている。

訪れてみればわかるが、ここは一般的な墓地とは様々な面で異なっている。敷地は広大で、建造物と墓地が森や丘と融合しており、まさに自然との一体感を感じることができる。大抵の墓地には樹木があるものだが、ここでは樹木やその他の植物の“使い方”がまるで異なっている。ここでは自然が上位にあり、自然環境がその立地条件を決めているのだ。ここは自然の秩序によって構成されていて、自然の“意思”がそこには確かに息づいている。きわめて自然に近い場所に埋葬される、むしろ、まさに自然の中に葬られるということからも、我々人間が結局のところ自然の摂理の一部であるということを象徴的に受け入れていることを表しているようだ。キリスト教の葬儀で唱えられる聖書の一節「土から生まれし者は土に帰る」のように。

ここスコーグスシュルコゴーデンにおいて、人が自然に還るという概念が最も象徴されているのが「ミンネスルンデン(Minneslunden)」である。これは“記念樹の木立”のような意味で、エントランスに入ってすぐ右の高台にある100×200メートルの木立である。ここは日本で言う合祀墓のような一帯で、個別に埋葬されているわけではないため、誰の遺灰がどこにあるかを指し示すような看板はない。この木立を囲うように歩道道があり、一番高いところに献花台がある。木立への立入は禁止。あくまで、ここは死んだ人が眠る場所なのだ。

この木立ですら、100ヘクタールもあるスコーグスシュルコゴーデンにおいては、様々な見事な場所の中の一つに過ぎない。他にも、主要建築物の「森の火葬場(Skogskrematoriet)」、瞑想木立の「楡の高台(Almhöjden)」、「森の礼拝堂(Skogskapellet)」と「復活の礼拝堂(Uppståndelsekapellet)」が有名だ。 しかし、スコーグスシュルコゴーデンは単に見事な場所や建築物の集まりというだけではなく、むしろ、この一帯が素晴らしく監督された全体であり、そしてそれはエントランスの外にあるシナノキの並木道からすでに始まっている。さらには、ここは訪問者が滞在する最初から最後までを深く考慮して動線設計されている。例えば、礼拝堂に至る道は、個人の死を悼む人たちが式典の前に少しでも落ち着いた気分になれるようデザインされてある。そして、この見事に建設された全体の出発点は、入念にアレンジされた北欧的な自然に他ならない。

現在の火葬場である「森の火葬場」は昨今のニーズに応えられていないとのことで、2013年に完成予定の新しい火葬場が建設中だ。この新しい建設がスコーグスシュルコゴーデンの既に素晴らしいデザインに何を付加してくれるのかは、とても楽しみなところだ。スコーグスシュルコゴーデンは観光地としてはきわめて特殊だが、外国からの観光客に誇りを持って勧めることができる。筆者は、現在のスウェーデン人の大半と同じく無宗教ではあるが、神聖な思いや感情には鈍感ではないと自認している。そして、ストックホルムでもっとも神聖な雰囲気が漂う場所をと聞かれれば、迷わずスコーグスシュルコゴーデンを挙げる。
(Text/Photo : Martin Ekelin)

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