リトルノ(Ritorno)

古き良き時代へとタイムトラベルしつつ美味しいコーヒーを味わえるカフェが、ここリトルノだ。ここは、ストックホルムのカフェの主流がホテルのラウンジ・スタイルへと変遷する以前の伝統的なカフェで、日本だと“純喫茶“の存在に近しいものだ。リトルノがオープンしたのは1935年。その後、1950年代の内装リフォームや幾度かのオーナー交代を経ているものの、オープン当初の雰囲気はそのままに今に至っているのは、常連客が多いという理由からいたずらにインテリアに変化を加えないようにしているからだろう。

扉を開けると、まずは煙草の煙に燻されて褐色がかった高い壁にいくつもの絵画が掛けられたフロアに足を踏み入れる。そこには、腰を下ろしてお茶やスイーツを楽しみながらくつろぐための十分な選択肢がある。いささか軋んでガタついた木製のイスとテーブルが配されたクラシックなブースは、隣を気にすることなく新聞をいっぱいに広げられるくらいのゆとりが個々の席にあり、壁一面に沿って備えつけられたよく使い込まれたロング・ソファは、たくさんの客を飲み込みそうなほど広々としている。メイン・ルームに置かれたジュークボックスからは未だに50年代の歌謡曲が虚ろに流れ、タイム・トラベルの感覚をより強いものにしている。

客層はさまざまだ。コーヒーが飲み放題なので近隣の中高生の間でも人気があり、40年前から毎日欠かさずに通っていそうな老人連中もチラホラ見かける。インテリ詩人のようなタイプもいれば、ミュージシャンらしき連中も少なくない。こんなに雑多な客層のミックスは稀有だが、それはこのような昔ながらのカフェが今ではストックホルムにほとんど存在しなくなったからだろう。

メニューは、スウェーデンのカフェでは定番のシナモンロールや、国民に最も愛された王子の一人、ベッティル王子にちなんだ伝統的なケーキ「プリンスベッティルトータ(Prinsbertiltårta)」、そして大人気のエビサンドをはじめとしたサンドウィッチも取り揃えている。コーヒーや紅茶、そしてチョコレート・ドリンクに至ってもそのクオリティは高い。このカフェの名前の由来は定かではないが、イタリア語の“Ritorno”は“戻る”という意味なので、1930年代から常連客らが日を置かずに店へに戻ってくることへのメタファーなのだろう。
(Text: Gustaf Kjellin / Photo: Martin Ekelin)

エリア : ヴァーサスタン
地下鉄駅: ウーデンプラン(Odenplan)
営業時間 (冬):月~金曜 07~22、土曜 08~18、日曜 10~18
営業時間 (夏): 月~金曜 07~18、土~日曜 10~16

住所 : Odengatan 80-82
メール : info@ritorno.se
電話 : +46-8-32 01 06

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