ロー・フュージョン (Raw Fusion)

ロー・フュージョンとは、スウェーデンのレコード・レーベルの名前であり、またストックホルムで根強い人気を誇っているクラブ・イベントでもある。そして、それら2つの側面を個別に語ることができないくらい、このレーベルとイベントは密接に関係している。ロー・フュージョンのストーリーは1996年に始まる。DJマッド・マッツ(DJ Mad Mats)の名で知られているDJ(兼ブレイク・ダンスのチャンピオン)のマッツ・カールソン(Mats Karlsson)は、友人のDJクラース・ボデン(Claes Boden)とともにストックホルムのストゥーレプランにあるクラブ「ストゥーレコンパニェット」で「フュージョン」(Fusion)というイベントをスタート。そこで彼らは、ブースの周りに突っ立ったままDJのプレイを見ているだけの客よりも、ミックスを重ねるめくるめくサウンドに身を委ねてフロアで踊り狂う、いわば「正しい」オーディエンスを求めた。その甲斐あってかフュージョンは瞬く間に大ヒットとなる。これまでのブッキングには、ユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイション(United Future Organization)カール・クレイグ(Carl Craig)ジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)ローラン・ガルニエ(Laurent Garnier)ロニ・サイズ(Roni Size)ルーイ・ヴェガ(Louie Vega)ザ・ルーツ(The Roots)といった錚々たる顔ぶれが名を連ねていて、当時のスウェーデンのクラブ・シーンではお目にかかれないようなアーティストが多く名を連ねていた。

数年の後、ストックホルムで最もセレブな地区ストゥーレプランの地域性とフュージョンの“ソウルフルでハイ・クオリティな音楽”という本来のコンセプトとの間にズレが生じ始める。メディア等によって誇大に宣伝されすぎたため、フュージョンには「適切じゃない」連中が押し寄せるようになった。

そこで、2000年にセーデルマルムにあるエンターテイメント施設モセバッケ(Mosebacke)に開催場所を移転したのに伴い、イベント名が「ロー・フュージョン」(Raw Fusion)へと変更された。この名前の変化は、これからも「ロー」(Raw)、すなわち荒削りでナマな状態であり続けたいという彼らの想いの表れだ。この移転とイベント名称の変更に伴いマッツは、新たなパートナーとして、スウェーデン・クラブ・シーンのベテランで DJアスパラガス(DJ Asparagus)の名で通っているDJのハリス・バーディク(Haris Badic)を迎えた。2人は“未知のすばらしい音楽を1人でも多くのオーディエンスに伝えること”をモットーにし、今スウェーデンで長きにわたって続いているアーバン・ミュージックのクラブ・イベントの中でただひとつ、ニュー・ヨークの ボディ・アンド・ソウル(Body and Soul)パラダイス・ガレージ(Paradise Garage)といった伝説的イベントと比較されるまでになった。

ロー・フュージョンは毎月最終土曜日の21:00~2:00にモセバッケでオープンしている。ソウルフル・ハウス、カッティングエッジ・ヒップホップ、エレクトロニック・ファンク、ロー・ストリート・ソウル、ダンスフロア・ジャズ、ラフ・ラテン、ディープ・ブギーといったジャンルにサウンドに身をゆだねるのが好きな人ならば、ストックホルムでこのイベントに参加しない手はない。

年月を経るにつれマッツは世界中で多彩なプレイを披露して回るようになり、国外でもっとも有名なスウェーデン人DJの1人となった。ロー・フュージョンをオーガナイズしつつも、それと並行して新しいサウンドを見出してはフレッシュなインスピレーション受けたりしながら、2002年にハリスとともにロー・フュージョン・レコーディングの経営をスタート。このレーベルではクラブ・イベント同様、極端なまでに純粋で一流のダンス・ミュージックをリリースしている。ロー・フュージョンのアーティストたちは、当初より一貫してローで実験的、都会的でストリートなテイストを存分に発揮している。スィンバッド(Simbad)スィゲール(Sygaire)、そして日本のジャズ・バンドの クオシモード(Quasimode)などが所属している。

2003年にマッツはロー・フュージョン・レコーディングのサブ・レーベル「ジャグリン・レコード」(Jugglin Records)を設立。このレーベル名は ラガ・ツインズ(Ragga Twins)のアングラ・ヒット曲「Jugglin」がその由来で、メイン・レーベルよりもよりアーバンなサウンドの作品をリリースするというのが目的だった。が、実際は10作品をリリースした後、空中分解してしまった。

ロー・フュージョン・レコーディングの作品は、公式サイトのオンライン・ショップで直接購入可能だ。日本でも、DMRのようなダンス・ミュージックのセレクトと品揃えが豊富なショップでは取り扱いがあるようだ。
(Text: Gustaf Kjellin)

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