オッジョブ (Oddjob)

2010年春に通算5作目となるアルバムをリリースしたオッジョブは、彼ら自身のこれまでの歩みを非常に誇らしく思っていることだろう。このクインテットは、ファーストアルバムをリリースした2002年から2年ごとに、スウェーデンのジャズシーンにきわめて興味深い貢献をし続けている。

彼らはアルバムごとにそのスタイルを変化させようとベストを尽くしている。2002年にグラミス賞に輝いたラテンジャズテイストのデビューアルバム「Oddjob」に始まり、ファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)やジョン・バリー(John Barry)の精神にどっぷり浸かったスピリチュアルでシネマティックな4作目「Sumo」に至るまで、彼らはいろんなジャンルを旅してきた。にも関わらず、70年代のエレクトリックジャズフュージョンを基軸としたシネマティックでグルーヴィなサウンドは変わることなくそこにある。このサウンドのせいか、スウェーデンのクラブDJの間でも、彼らはお気に入りのバンドなのだ。

トランペットのゴラン・カイフェス(Goran Kajfeš)、ベースのペーテル・フォッシュ(Peter Forss)、アルトサックスのペール“ルスクトレス”ヨハンソン(Per “Ruskträsk” Johansson)、そしてピアノのダニエル・カールソン(Daniel Karlsson)とドラムスのヤンネ・ロベルトソン(Janne Robertson)によるこのジャズ・クインテットは、5人それぞれが他のアーティストらと注目に値するようなコラボレーションを行っていたり、きわめてインプレッシヴな音楽的バックグラウンドを持っている。メンバー全員が曲づくりに参加しているが、トランペットのカイフェスがフロントマンとして特に目立っている。カイフェスはソロ活動においてもグラミスを受賞した「Headspin」をはじめ高評価を得た作品を多くリリースしている。これまでにもロビンモニカ・ゼタールンドザ・サウンドトラック・オブ・アワ・ライヴズ(The Soundtrack of Our Lives)ジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)、そしてスティング(Sting)といった有名アーティストらとレコーディングやパフォーマンスを共にしている。こういったカイフェスの経歴を見ると、スウェーデンにおいて多くのジャズバンドが失敗している中でなぜオッジョブが成功してきたかが理解できる。彼らは、耳の肥えた中高年のジャズファンも、はたまたトレンドに敏感な若者をも惹きつけて離さないサウンドを世に送り出し続けているのだ。

彼らのアルバムを聴いていると、彼らがカバー曲に特別な愛着を持っていることがすぐにもわかるだろう。彼らのカバー曲のチョイスは、あらゆる音楽に対する彼らの造詣の深さを明示していて、時にはファンに思いがけないインスピレーションを与え、トレンドに敏感な若いファンたちにも支持される大きな理由にもなっているようだ。アルバム「Koyo」にはクラフトワーク(Kraftwerk)の「Man Machine」が、「Luma」にはキング・クリムゾン(King Crimson)の「Moonchild」、そして「Sumo」にはニルヴァーナ(Nirvana)のプレイによって世界的に有名になったフォークソング「Where Did You Sleep Last Night」といった、ジャンルや年代を超えた名カバー曲が目白押しだ。

2010年2月に発売されたアルバム「Clint」も、例外なく彼らのカバーに対する愛情を表現している。このアルバムは、タイトル通り名俳優であり名監督、作曲家で無類のジャズ好きで知られるクリント・イーストウッドを讃えたアルバムで、エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)、ラロ・シフリン(Lalo Schifrin)、レニー・ニーハウス(Lennie Niehaus)といった著名作曲家たちがイーストウッドの映画のために書き下ろした曲をメインに12曲で構成されたアルバムだ。すべての曲がユニークにカバーされていて、マイルス・デイヴィスを思わせるトランペット、不気味なオルガンや陰鬱なサックスのサウンドに満ちた作品に仕上がっている。最後の曲は、イーストウッドが音楽監督を務めた2007年の映画「さよなら。いつかわかること」(原題:Grace Is Gone)ために自ら書き下ろした「Let’s Do It」だ。また、2010年にイーストウッドが80歳の誕生日を迎え、さらにはアルバムの大半の曲を作曲したエンニオ・モリコーネがスウェーデンの音楽賞「Polar Music Prize」を同年に受賞したことからも、アルバム「Clint」は現代という時代性を反映しているとも言える作品だ。このアルバムは、過去を振り返りながらも常に“現在”的な音楽を作り続けている彼らのメンタリティを抽出したような作品に仕上がっていて、既に成功していると言える彼らの名声をさらに高めることになるアルバムに違いない。
(Text: Gustaf Kjellin / Photo: Sanna Lindberg)

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