ラーレ(Laleh)

ラーレはいわば、今日のスウェーデン音楽業界におけるアンチ・テーゼだ。一線で活躍している他のアーティストらと同様の手続きを踏まずに、換言すれば音楽業界に見えずとも厳然としてある“規則”に縛られることなく、彼女はスウェーデン全国区にまでその名を広げている。その一つの例として彼女のホームページに掲載されている自らが綴ったバイオグラフィーを挙げると、こういった公式な文章だと通常ならばマネジメント側のチェックが徹底されるのだが、彼女の場合は彼女らしいハッキリとした個性的な言葉で、なおかつスペル間違いもそのままに書き連ねている。何かに縛られたりカテゴライズされることを嫌いながらも、その個性的なスタイルや言動のため彼女はボヘミアン・ヒッピーや社会民主義的な人物とカテゴライズされがちで、それが彼女のフラストレーションにもなっている。

ラーレはすべての曲を自らプロデュースし、そしてどんな小さな音であっても音楽制作のすべてをコントロールする重要性を強調している。彼女は自ら多くの楽器を駆使し、またそれら楽器のプレイもヴォーカルと同様に重視している。ソフトなシンガーソングライター調の曲が多いが、常に自身の個性に満ちた声調を維持し、それと同時に表現方法が単一化することを拒んでもいる。ほとんどのスウェーデンのアーティストがスウェーデン語だけで歌うか、あるいは英語だけの曲をリリースするかに対して、彼女はスウェーデン語や英語だけでなく、自らのルーツでもあるペルシア語をもその表現手段として用いている。

彼女は1982年にイランで生まれた。中東戦争が激化する中、家族は1歳になる彼女を伴って戦火を逃れ国外への避難を余儀なくされた。それから難民として崩壊しつつある旧ソ連等での困難な時期を経て、彼女が12歳の時、スウェーデンに辿り着いたのだ。

デビューアルバム「Laleh」を2005年にリリースし、2曲目の「Live Tomorrow」は瞬く間に大ヒットとなった。同年にはこの衝撃的とも言えるデビューにより各賞を独占。しかし、2ndアルバムをリリース後にストックホルムを脱出し、スウェーデン北部の自然豊かな街フェレフテオ(Skellefteå)に向かう。大都会のメンタリティやセレブな生活からの脱却のための引越しであると、かつて彼女は語っている。2009年リリースの3rdアルバム「Me and Simon」は移住の影響か、以前にも増して美しく、そしてメランコリックに仕上がっている。
(Text:Martin Ekelin / Photo:Simeon Ogen, Lost Army/Warner Music)

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