ヨン・ヘンリク・フェルグレーン(Jon Henrik Fjällgren)

北欧の現代の音楽シーンにおいて、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド北部のラップランド地方(Lappland)の先住民サーミ人(Same)の伝統歌謡・歌唱法ヨイクは非常にマイナーなものであり、伝統音楽の範疇でしか今までは扱われてこなかった。シャーマニズムにもつながるヨイクは北欧がキリスト教化されていく中で相容れるものではなく、弾圧さえ受けてきた歴史を持つが、現在まで細々と生き延びてきた。そんなジャンルに新旋風を巻き起こしたのが若干29歳のヨイク歌手、ヨン・ヘンリク・フェルグレーン(Jon Henrik Fjällgren)である。フェルグレーンがスウェーデンのタレント発掘番組において2014年に優勝したことで、ヨイクに注目が集まったのである。

南米はコロンビアで生まれ、孤児院で幼児時代を過ごしたのちに、スウェーデン北部のサーミ人の家庭に養子として迎え入れられた彼は、トナカイに囲まれ自然とサーミの伝統豊かな地域で育った。そういった一般的ではないバックグラウンドで子供時代はいじめにあうこともあったそうだが、その後ヨイク歌手としての鍛錬を積み、10代の若いうちから教会でスウェーデン国王の前でヨイクを歌唱するなどの経験をしている。そして2014年、フェルグレーンが26歳の時に出演したタレント発掘番組、タラング(Talang)で、若くして命を落とした友人への気持ちを綴ったオリジナルのヨイク「ダニエルのヨイク(Daniells Joik)」を歌唱し優勝した。このパフォーマンスは審査員たちが涙を流すほどのものであった。

その翌年には、欧州の音楽の祭典ユーロビジョン・ソングコンテスト(Eurovision Song Contest)のスウェーデン予選に出場し、決勝戦において2位に終わり、この出場曲「私は自由(Jag är fri)」を含むアルバム「Goeksegh – Jag är fri」はスウェーデンのアルバムチャートで1位を獲得した。これはヨイクというジャンルのアルバムとしては歴史を塗り替える快挙である。その後、本業のトナカイの放牧などサーミ人としての伝統を保ちながら暮らす傍ら、スウェーデン各地の音楽フェスなどでパフォーマンスをし、ヨイクの普及にも努めている。2017年春にはニューアルバム「Aatjan goengere 」がリリースされるなど、音楽活動にもアクティブだ。フェルグレーンも含め、今後ヨイクというジャンルがスウェーデンの音楽界においてどのような発展を遂げていくのかが興味深いところだ。

(Text: Yoshihiro Takahashi)

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