イェッタ・スメッタ (Hjärta Smärta)

アンゲラ・ティルマン・スペランディオ(Angela Tillman Sperandio)とサミーラ・ボアバナ(Samira Bouabana)の2人の女性グラフィックデザイナーは、情感たっぷりに「イェッタ・スメッタ(Hjärta Smärta)」と名付けたデュオとして、イキイキとしたグラフィックデザインを世に送り出している。ちなみに「Hjärta Smärta」とは、スウェーデン語の慣用句 “Hjärta och smärta (傷心)” を捻った名前だ。

2001年に結成されたこのデュオは、当時は企業概要や展示会向けグラフィック、そして書籍デザインを主に手掛けていたのだが、意外なことに、彼女たちが知られるようになったきっかけはウォールペーパーだ。デュオ結成の年、ストックホルムのバー、公園、公衆トイレ等に実際に描かれていた落書きやグラフィティをパターンにしたウォールペーパーのシリーズ「グラフィティ・ウォールペーパー(Graffiti Wallpaper)」をリリースした。このウォールペーパーが評価され、デュオは「Young Swedish Designer 2001」を受賞し、メディアが彼女たちのことを好意的に取り上げるようになった。このシリーズの一つは、東京にある「Tokyo Hipsters Club」の2005年のオープニングの際に景品として配られたトイレットペーパーにもプリントされている。現在このウォールペーパーは、スウェーデンのナフナールムセウム(国立美術館)の応用アートとデザインの永久コレクションにも入っている。

イェッタ・スメッタのデザイン手法には、既出のグラッフティウォールペーパーやイヤリングで構成されたタイプフェイス等に見られるように、古典的な中にも遊び心や捻りが多い。ちなみに、太さ別で3バージョンがあるそのタイプフェイスは、そのまま「Earring Typeface」と名付けられている。イェッタ・スメッタがより広く知られるようになったのは、スウェーデン最大の薬局チェーン「アポテーケット(Apoteket)」の鎮痛剤等のキャンペーンで彼女たちが手掛けたグラフィックデザインがきっかけとなった。2年もの間、デュオはアポテーケットの多くの広告、屋外キャンペーン、ショップディスプレイを手掛けたおかげで、大抵のスウェーデン人がイェッタ・スメッタのデザインに目にすることとなった。

彼女たちの最新プロジェクトは、女性のグラフィックデザイナーやアートディレクターにスポットをあてることを目的として2009年にスタートした「Hall of Femmes」だ。グラフィックデザイナーとして活動した数年の間、彼女たちは模範的女性像を探求していたのだが、業界内には尊敬に値し、後について行きたくなるような女性の存在をついぞ見つけることができなかった。そこでデュオは、模範的女性の欠乏を解決するために、フェミニスティックで政治的なプロジェクト「Hall of Femmes」をスタートさせたのだ。この名前は“名誉の殿堂”を意味する“Hall of Fame”と、フランス語で女性を表す“Femmes”の2つを掛け合わせた造語だ。

このプロジェクトは、講演や展示会の他に、模範的女性についてのシリーズ本が含まれている。2010年4月に発行された初刊は、伝説的アートディレクターのルース・アンセル(Ruth Ansel)の作品をフィーチャーした「Hall of Femmes: Ruth Ansel」で、スウェーデンのインディーズ出版社 Oyster Press が発行している。ルース・アンセルとは50年以上にわたって業界で活躍し続けている伝説的な女性で、数え切れないほど多くの有名雑誌でアートディレクションを手掛け、ダイアナ・ヴリーランド(Diana Vreeland)、アニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)、ブルース・ウェーバー(Bruce Weber)といった錚々たる顔ぶれとコラボレートしている。
(Text : Gustaf Kjellin)

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