グヌッチ(Gnucci)

ヒップホップの本場アメリカでさえ、リル・キム(Lil Kim)やミッシー・エリオット(Missy Elliott)などがメジャー・シーンに台頭するまでは、女性ラッパーの存在は陰に隠れたものであった。スウェーデンでも、90年代にマルチにラップもこなしたネネ・チェリー(Neneh Cherry)や伝説のレイラK(Leila K)が活躍した後は、女性ラッパーの姿はほとんど見られず、ヒップホップ・シーンにおける女性の活躍も非常に限られたものであった。そんななか突如インディーズ・シーンに新星のごとく現れたのが、グヌッチだ。

1987年にストックホルム近郊の静かな水辺の町に生まれ育ったアナ・ラブ(Ana Rab)は、7歳の頃からミックステープを作り始める。その当時、彼女に影響を与えたアーティストはホイットニー・ヒューストンや、90年代にヨーロッパを支配したユーロダンスであったという。高校卒業後ロンドンに向かう。カーナービー・ストリートのレコード・ショップの店員として働く毎日であったが、そこで南アフリカ出身のラッパー、スポーク・マタンボ(Spoek Mathambo)と出会う。その後ラッパー・カップルとしてスウェーデン南部の町、マルメに拠点を移し、音楽活動を開始する。

そんなグヌッチは2012年の初めになって、グヌッチ・バナナ(Gnucci Banana)としてデビューシングル「Famalama Jam」をリリース。ポップで遊び心たっぷりのシングル、そしてバルセロナで夫のマタンボと撮影したミュージックビデオも話題を呼び、同年の国営ラジオの音楽チャンネル(Sveriges Radio P3)のHIP HOP/SOULの優秀作品賞にノミネートされた。コラボにも非常に積極的で、スウェーデンのDJトリオ、マッシュ・アップ・インターナショナル(Mash Up International)や、以前スウィードナビでも紹介したヒップホップ・ユニット、ループトループ・ロッカーズ(Looptroop Rockers)、そしてスウェーデンのアイドル番組出身の人気ポップアーティスト、トーべ・スティルケ(Tove Styrke)などとも共同で作品を発表している。

2012年の初秋にリリースしたデビューEP「Oh My Goodness!」では、そんな彼女の世界を広げる4曲が新たに発表された。ファーストシングルの「360 Donna」のミュージックビデオでは日本のサブカルチャーを彷彿とさせる映像もスパイスを効かせている他、タイトル曲「Oh My Goodness!」では類稀なるラップ技術を披露している。

そんなグヌッチが2014年にリリース予定のEP「Psychohappy」からのシングル、「Finders Keepers」を発表した。現在注目の映像アーティストRoxy Farhatが監督を担当したPVでは、これまでの明るめなサウンドに、より重みが加わった新しいグヌッチの世界観を表現するような出来になっている。そして、そのスタイルに怖じ気づくことも無く、ラッパーとしての技術にも、さらに磨きがかかっている。そんなグヌッチのラッパーとしてのユニークさは、スウェーデンのインディーズ・シーンに適応できるようなスタイルの中立性であろう。ギャングスター・ラップのようなハードなスタイルでもなく、極端にソフトでもないカラーの強さ。そしてユーモアを包括したポップな存在感。本人もメロディとフィーリングあるスタイルが核になっていると語るが、ニュー・シングル「Finders Keepers」でもグヌッチの世界観は光を放っている。現在は、ミュージックフェスや、DJセットなど国内外の様々なシーンでパフォーマンスをしている。その紅一点の存在感から今後も目が話せない。

(Text: Yoshihiro Takahashi, Photo: IRIKA

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