ディセイ (Disey)

どの都市にも、その都市の特性形成に貢献し、中には伝説的な存在ともなった人物が確かに存在する。ストックホルムにおいては、そのような一人にアーティスト・ディセイの存在を欠かすことはできない。昨今のストックホルムのポップ・カルチャーにちょっとは明るい人なら、誰でも一度は耳にした名前であるはずだ。

ディセイ~本名:ニクラス・ナカノ・ダールクヴィスト~は、自身のキャリアを80年代の後半にスタートさせる。当時住んでいたコンクリート壁に囲まれた郊外の街で友人のスィッギ(Ziggy)とともにグラフィティを描きはじめたのだが、時を経るにつれ彼の噂は広まり、いつしかスウェーデンでもっともスキルのあるグラフィティ・アーティストの1人として知られるようになった。ディセイとは彼のライター名だが、今日でも彼は本名ではなくディセイの名前で呼ばれている。

80年代末に、ディセイの名は尊敬とともにグラフィティ界で脚光を浴びることになる。友人スィッギとともに完成させたグラフィティ・ペインティング「Red Dragon」が、当時スウェーデンで最も話題を集めたのだ。ちなみにスウェーデンにおいてグラフィティは日本よりも厳しく取り締まられている。要するに、その多くは違法だ。にも関わらず「Red Dragon」は20年後の今でさえ触れることができない状態で当時のまま保存されている上、ストックホルム市が文化財に指定しようとの動きまで出てきているのだ。もしそうなればスウェーデンの歴史で初めて、公の場に描かれた違法なペインティングに与えられる名誉ということになる。このペインティングを完成させた時代、彼はスタッファン・ヒルデブランド監督(Staffan Hildebrand)が1987年に製作したカルト映画「Stockholmsnatt」の中である役を演じたのだが、おそらくアーティストとしての活動よりこの映画への出演の方が一般のスウェーデン人の間では知られている。

ディセイのバックグラウンドは言うまでもなくグラフィティだが、電車やビルであった自身の表現の場が、年を経るにつれてインテリアやキャンバスにシフトしてきている。近年ではレストランやバー、ショップ、住宅等の空間を装飾を手掛けている。絵画を描いては販売したりアート展示に参加するなど、個人的なクリエイティブ・ワークにも余念がない。2008年にソロで開催した、文字の形状や色の本質を探求した作品の展示会は、多くの称賛を受けることとなった。20年にわたって壁に色彩の爆発を描き続けた後の今日、彼は白と黒、そしてその間のグレーのみを用い、さらには従来描いてきた文字や記号を解剖学的に分解して作品を創り出している。最近のディセイの芸術作品は、グラフィティに代表される“絵”だけでなく、スタジオで製作した立体作品が多くなってきている。

ディセイの作品に出会う最良の方法は、ギャラリーを巡るのではなく、ストックホルム市内を散策することだ。まずは、ストゥーレプランにほど近いホゥムレゴーデン公園(Humlegården)にある、ディセイが手掛けたパターン・アートに彩られたスケートボード・ランプを一周することからスタート。それからソフォのオーセガータン通り(Åsögatan)にある、彼がショップ・サインとインテリアのペインティングを手掛けたスニーカーストア「SNS」へ。そしてそこから歩いて数分にあるバー「ナーダ(Nada)」では、彼が手掛けたウォールペインティングを堪能しながらカクテルを飲むのも悪くない。普段からディセイはセーデルマルムでブラブラしているので、運がよければ彼とすれ違うことだってあるかも知れない。彼が道端で見つけたガラクタを小脇に抱えて歩いているのを、この辺りでしばしば目撃されている。

(Text: Gustaf Kjellin)Email : diseydeesign@gmail.com

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