ブローデル・ダニエル (Broder Daniel)

90年代スウェーデンのインディーズシーンに現れたバンドの中で、ブローデル・ダニエルは最も熱狂的に愛された伝説的なバンドだ。20年近いキャリアでこのバンドは熱狂的なファンの層を着実に広げ、そして数多くのスウェーデン人にバンドを始めるインスピレーションを与えてきた。このバンドが存在しなかったらスウェーデンのインディーズシーンがどのようになっていたかを想像できないほど、ブローデル・ダニエルの影響を多くのスウェーデンのバンドのサウンドに聴くことができる。

今日では誰もがブローデル・ダニエルの偉大さを疑わないのに反し、キャリアの初期には彼らが将来これほど尊敬される存在になると予想する者はおそらく皆無に近かった。1995年リリースのファーストアルバム「Saturday Night Engine」はほとんどの批評家たちからの酷評の嵐に見舞われた。バンドのメンバーはろくに楽器を扱えない、ヴォーカルのヘンリク・ベリグレーン(Henrik Berggren)はまともな歌も歌えない、というのが一般的な評価だった。この、一切の才能を持ちあわせていないバンドが勇敢にもレコードをリリースしていることに対して怒りを覚える者も決して少なくなかった。

それでも、バンドを愛してやまないファンのグループも小さいながら存在していた。失恋や社会に対する疎外感などのテーマをフランクに表現した歌詞は、ファンとバンドの間に一体感を生み出した。これによりヴォーカリストのベリグレーンはまさに“悲しきヒーロー”となり、スウェーデンのインディーズ系ティーンネイジャーらの苦悩や悲しみを表現した。特徴的な黒いアイラインや頬に散りばめた星に見られるベリグレーンのユニークなスタイルは、後のスウェーデンに登場した“パンダ・ファッション”に強く影響を与えた。

1996年に「Broder Daniel」、1998年に「Broder Daniel Forever」をリリース。ファーストアルバムと比較すると幾分洗練された印象があり、「Work」という曲がマイナーヒットとなったが、商業的成功までは及ばなかった。それよりもむしろ、彼らのパーティがあまりにも熱狂的であったり、仕事を共にするのが難しいバンドとして、という方面でその名を馳せた。

ブローデル・ダニエルにとって転機となったのは、ルーカス・ムーディソン(Lukas Moodysson)監督作品の映画「Fucking Åmål」(邦題:ショー・ミー・ラヴ)のサウンドトラックに彼らの3曲がセレクトされたことだ。この映画は1998年のスウェーデンで、タイタニックのような大作映画を抑えて最もヒットした映画だ。この映画はティーンネイジャーの苦悩や疎外感を主要なテーマとしていて、彼らの曲が映画のムードと見事にマッチした。この幸運によって、バンドはスウェーデンの新しいヒーローとなったのだ。皮肉にもこの商業的成功に続いてバンド崩壊のサインが表れはじめ、活動休止するなどした。バンドの将来を大きく左右する事件となったのが、バンドのベーシスト、ホーカン・ヘッルストロム(Håkan Hellström)が2000年にリリースしたソロアルバム「Känn ingen sorg för mig Göteborg」が意外にも大成功を収めてしまったことだ。ヘッルストロムはブローデル・ダニエルの熱狂的なオーディエンスをごっそり引き継ぎ、トップのインディーズスターへと駆け上ったのだ。

2003年にブローデル・ダニエルの最後のアルバム「Cruel Town」がリリースされた。これは最も成功したアルバムとなり、スウェーデン中を巡る大きなツアーがそれに続いた。しかし、このツアーの後にギタリストのテオドル・イェンセン(Theodor Jensen)がヘッルストロム同様にバンドを脱退し、自身のソロプロジェクト、ザ・プラン(The Plan)の活動に専念することに。この時点では何も公式に発表されていなかったが、ブローデル・ダニエルの将来が不透明なものへとなり始めていた。

2008年3月、バンドのギタリスト、アンデシュ・イェートベリ(Anders Göthberg)が自殺した。ブローデル・ダニエルは、19年前に彼らがバンドを結成した街イェテボリで開催されたフェスティバル「Way Out West」にて、イェートベリに敬意を表してパフォーマンスを敢行した。結果的にこのコンサートはブローデル・ダニエルの最後の公式のパフォーマンスとなった。
(Text: Martin Ekelin Photo: Carl Hjelte)

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